大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成12年(行ケ)56号 判決

東京都品川区北品川6丁目7番35号

原告

ソニー株式会社

代表者代表取締役

出井伸之

訴訟代理人弁理士

小池晃

田村榮一

伊賀誠司

藤井稔也

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 及川耕造

指定代理人

吉田敏明

山口由木

廣田米男

主文

特許庁が平成10年異議第70577号事件について平成11年12月20日にした取消決定を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

(裁判長裁判官 山下和明 裁判官 山田知司 裁判官 阿部正幸)

請求

(1) 特許庁における手続の経緯

原告は、発明の名称を「非水電解液二次電池」とする特許第2638919号発明(昭和63年4月30日に出願、平成9年4月25日に特許権設定登録、以下「本件発明」という。)の特許権者である。

本件発明の特許については、特許異議の申立てがあり、特許庁は、これを平成10年異議第70577号事件として審理した結果、平成11年12月20日、「特許第2638919号の特許を取り消す。」との取消決定(以下「本件取消決定」という。)をし、平成12年1月12日、その謄本を原告に送達した。

(2) 本件取消決定の理由の要点

本件発明は、特開昭62―272472号公報及び特開昭62―90863号公報に各記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法29条2項の規定に違反して特許されたものである、というものである。

(3) 訂正審決による特許請求の範囲の訂正

ア 本件発明の特許請求の範囲の記載は、本件取消決定の当時、次のとおりであった。

銅箔両面に有機物焼成体を被着してなる負極材がセパレータを介して正極材と共に巻回され電池缶内に収納されてなる非水電解液二次電池であって、上記銅箔の両面に有機物焼成体がほぼ均一な厚さで被着されるとともに、最外周部に銅箔の外周側表面が露呈する銅箔表面露呈部が設けられていることを特徴とする非水電解液二次電池。

イ 原告は、本件取消決定後に本件明細書の訂正をすることについて審判を請求し、特許庁は、これを訂正2000年審判第39072号事件として審理した結果、平成12年8月23日に上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし、本件訂正審決は確定した。

ウ 本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである(〔 〕内が訂正により追加ないし変更された箇所である。

銅箔両面に有機物焼成体を被着してなる負極材がセパレータを介して〔LiMn2O4又はリチウムコバルト複合酸化物を正極活物質として含む混合物をアルミニウム箔両面に被着してなる〕正極材と共に巻回され電池缶内に収納されてなる非水電解液二次電池であって、上記銅箔の両面に有機物焼成体がほぼ均一な厚さで被着されるとともに、最外周部に〔おいて銅箔片側にのみ有機物焼成体が被着され〕銅箔の外周側表面が露呈する銅箔表面露呈部が設けられていることを特徴とする非水電解液二次電池。

(4) 以上のとおり、本件発明の特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定したので、主文同旨の判決を求める。

4 理由の要旨

被告は、原告主張の事実を認めると述べ、防御の方法を提出しない。本件のように、取消決定の取消を求める訴訟の継続中に当該特許権について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には、当該取消決定を取り消さなければならないものと解すべきであるから、原告の請求は理由がある。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例